自宅ネットワークをLISPサイト化しました

ここ一週間ほど日記を更新しなかったのは自宅ネットワークの改造で遊んでいたから修論で忙しかったからです.そんなことをしているうちに自宅ネットワークのLISPサイト化が完了しました.

LISPって何?

関数型言語でも超至近距離・声優アイドルグループでもありません.Locator/Identifier Separation Protocol と呼ばれるネットワークの技術です.

刻々と進行するグローバルルーティングテーブルの肥大化に対応するために,根本的にインターネットのアーキテクチャを見直そうという動機で研究されています.IPアドレスはホストの存在場所(Locator)と個体識別子(Identifier)の両方を1つのアドレスで表しており,これによって経路数が爆発していると分析し,この2つを分離してしまおうという発想で設計されています.

インターネットでは「私の会社のこの人に会うためにはこの道順を通ってこの建物に行ってください」という情報がグローバルで交換されています.そのため,「この人には〜」や「この道順を〜」という制御要求(トラフィックエンジニアリング)が増えていくたびに全世界に情報が増えていくことになります.そうした情報を載せているのがグローバルルーティングテーブルです.LISPでは「この人に会うためにはこの建物に行ってください」という情報と「この建物に行くためにはこの道順を通ってください」という情報を分けて扱います.前者がLocator/Identifierマッピング,後者がグローバルルーティングテーブルです.グローバルルーティングテーブルから「この人には」という情報がなくなるので,ルーティングシステムの負担が軽くなるというわけです.

他にも嬉しいことはあるんですが,簡単に言うとこんな感じです.技術解説はそのうち書きたいと思います.

WIDEでの実験についてはあきみちさんの記事をご覧ください.

自宅ネットワーク

そんなわけで自宅のルータを xTR にしてLISPサイト化しました.IPv6 のアドレスを APAN-JP から割り当てて頂き,APAN-JP の LISP ネットワークに接続させてもらいました.lisp[46].net とは別の LISP ネットワークです.

せっかくなので中に Web サーバを立てて Looking Glass を設置しました.IPv6 専用です.

http://www.lisp.yuyarin.net/

図は非LISPサイトからのアクセスの様子です.

LISPサイトからのアクセスがあった場合,APAN-JP のアドレスなのでまずは APAN-JP のネットワークにに吸い込まれ,APAN-JP の用意した PITR (図の APAN-JP PxTR)に到着します.ここで PITR は Mapping Server に問い合せて僕の EID prefix から RLoc を解決します.RLoc は IPv4 アドレスのみです.パケットは LISPカプセル化されて IPv4 ネットワークを流れ,僕の ETR(図の yuyarin xTR)に届きます.ここでカプセル化が解除されて IPv6 パケットとして,僕の自宅のネットワークを流れて Web サーバに届きます.

しばらく遊びながら,トラフィックエンジニアリングなんかもやってみようかなと思います(エンドサイトだけだと何も出来ないけど).コンテンツがサイトにあって,アクセスする人がいないとトラフィックが流れないので少し寂しいですね.自宅ですし仕方が無いのかもしれませんが.lisp[46].net への接続は個人で遊びでやるには少し敷居が高そうです.

まったく関係の無い本

初めての人のためのLISP[増補改訂版]

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