Level3 と Comcast がネットワークの中立性をめぐり大激論

2010年11月29日,米国の Tier1 プロバイダである Level3 は,米国ケーブルテレビ大手の ComcastComcast 内に流れこむビデオトラフィックに対し,Level3 に recurring fee (自動更新料金)を要求している,と発表し,インターネットの中立性に関する議論を巻き起こした.両者はブログやプレスリリースで主張の応酬を続けている他,NANOG でも議論が巻き起こっている

Level3 は2010年11月11日,ストリーミングサービス NetflixCDN プロバイダに選ばれたと発表しCDN 容量を 2.9 Tbps 増強する必要があると述べている.これにより増加するトラフィックが今回の問題の引き金になっている.

Comcast と Level3 の CDN 部門はお互いに料金を請求しない settlement-free peering (精算不要ピアリング)の関係にあり(CDN でない部分は Transit である),現在のところトラフィックの量は 2:1 (Level 3 から Comcast に流れこむトラフィックが,Comcast から Level3 に流れこむトラフィックの倍)になっているが,これが Netflix への CDN 提供により Level3 は 5:1 のトラフィックを提案しており,このバランスでは settlement-free peering をこれ以上受け入れることができないと Comcast は主張している.

この主張に対して Level3 は,ComcastNetflix に競合する自社のケーブルテレビや Xfinity に有利なように価格を決定し,これは Comcast のケーブルテレビ最大手の優位性を利用した主張であり FCC (米連邦通信委員会)の定めるネットワークの中立性に反する,と主張し,FCC に苦情を申し立てている.

この後もお互いブログやプレスリリースで主張を続けており平行線をたどっている.

FCC はネットワークの中立性に関するルールの投票を 12月21日に行うと発表した.

コメント

個人的には Comcast の言っていることのほうが筋が通っているように思う.Akamai のような CDN は視聴者に対する接続性を買うために料金を支払って Comcast のようなプロバイダに接続し,コンテンツの配信を行うのだが,Level3 の CDNComcast に料金を払っていない.それどころか Comcast は Level3 から Transit を買っているので料金を払わなければならない.Level3 は Tier1 の優位性を利用して取るものを取って払うものを払わないということをやっているように見える.Comcast は取るものを取るのはいいけど,払うものはちゃんと払ってバランス取りましょうよと言っている.横暴だとは思えない.

Netflix は数万タイトルのテレビ番組や映画をストリーミング配信する企業で,そのトラフィックはピーク時にアメリカ全体のトラフィックの2割を超えるという報告もある.

Comcast は米国3大テレビの1つであるNBCの買収も進めようとしていて,これも動画配信という点でこの問題に絡んできている.

FCC の中立性のルールは Google をはじめとしたコンテンツプロバイダからは支持を得られているが,ケーブルテレビ事業者や電話事業者からは反対の声が相次いでおり,Comcast は今年春に,FCC にルールを決めて従わせる権限があるのかを法廷に申し立てて,自身の主張の正しさを勝ち取っている.

この一件は米国におけるスマートテレビの行方も左右しかねないので注目に価する.

Comcast の解説ビデオ