今週の気になったお話(2010/11/29〜2010/12/05)
毎週の気になった記事を要約するコーナー.
NTT ドコモがタクシーに Wi-Fi ルータを設置
2010年12月 3日から2011年 3月31日まで,NTT ドコモが東京無線のタクシー820台に FOMA 網に接続された Wi-Fi ルータを設置するようだ.
チャネルの設定方法や,タクシー同士が近づいたときや他のアクセスポイントが近くにあったときの干渉が気になったが,きっとタクシーの外まで飛び出て影響するほどの強い電波は出さないのだろう.
http://japan.internet.com/allnet/20101130/4.html
http://journal.mycom.co.jp/news/2010/12/03/112/index.html
富士通研究所があらゆる平面状の物質に電源トランジスタを作製する技術を開発
電源回路の電力消費を削減するには,低損失の電源トランジスタを実現できるワイドバンドギャップ半導体である ZnO を用いるのが望ましいが,高耐圧の実現に必要なチャネル材料の低濃度化や,電界集中の原因となる材料表面に存在する電荷トラップの抑制などの課題があった.
富士通研究所はインジウムガリウム酸化亜鉛 (IGZO) を使って電源トランジスタのチャネル部分をポリマー被膜で保護することで,100V トランジスタを動作させるのに成功した.
銅基板上に電源トランジスタが作製できると放熱性が高められ,コストも抑えることができる.
ソニーが高速応答可能な新液晶配向技術を開発
ソニーの高速応答液晶配向技術 FPA(Field-induced photo-reactive alignment) の改良版として Hybrid FPA が開発された.
液晶ディスプレイの高速応答のためには液晶分子にプレチルト(傾き)を与える方法がある.FPA は独自開発した配向膜(高分子膜)を基板に対して斜めにすることで液晶分子のプレチルトを保存している.この配向膜は液晶分子に親和性の高い部分とUV光で硬化する部分を持ち,電圧を加えながらUVを照射することで配向膜を斜めの状態で硬化させる.これにより電圧をオフにしてもプレチルト角が保たれ,電圧をオンにしたときに液晶が一斉に倒れるので高速応答と高コントラストが実現できる.
Hybrid FPA は片側の基板の配向膜だけを傾けてプレチルト角を保存させる手法(もう片側はVA方式と同じ).これにより液晶を半分側だけほぼ垂直にすることができ,電圧をオフにした時の液晶応答速度も向上することが可能になると同時に,高コントラストが実現可能になる.
Sony Japan | ニュースリリース | 液晶ディスプレイの高速応答を実現する新液晶配向技術“Hybrid FPA”開発
IBMが光学デバイスをCMOSプロセス上に直接集積する技術を開発
電気デバイスと光学デバイスを同一のシリコン上に集積し,電気信号の代わりに光パルスを用いてチップ間の通信を行う技術を開発した.これにより小型で高速かつ電力効率の高い信号伝送が実現でき,集積密度を10倍以上向上させることが可能となる.1Tbps で送受信できる1チップ・トランシーバも 4x4mm^2 のサイズで実現可能になるという.
製造工程でも,従来は光学デバイス用に特殊な製造装置を用いていたが,この技術では CMOS プロセスの製造ラインの前半で製造できてしまう.
この技術は「CMOS集積シリコン・ナノフォトニクス」と呼ばれ,次世代スーパーコンピュータなどに用いることができる.
NECがばらつきを抑えたインクジェット印刷法CNTトランジスタを開発
インクジェット印刷法はディスペンサ印刷法と比べて微細な回路を作ることが可能であるが,適した特性を持つインクの開発が困難であった.この成果ではインクにおけるCNTの高純度化,添加剤の最適化,添加剤除去工程によって,移動度が従来比10倍,性能のばらつきが従来比1/3(13%),オンオフ比約10000のCNTトランジスタの開発に成功した.
阪大が失明者に人工視覚を与えることに成功
網膜の外側にある強膜の中に7mm四方の刺激電極のチップを取り付け,眼球内に埋め込んだ帰還電極へ微弱電流を流したときに反射する電流で網膜を刺激することにより,網膜の異常で失明した網膜色素変性症の患者の視力を回復させることに成功した.
先行研究がドイツや米国で行われているが,網膜を直接刺激する方法なので,網膜を傷つける可能性がある.この方法は強膜にチップを置くので安全性が高いと主張している.
色の識別はできないが,明暗を識別することができるので指の数を数えられる程度には回復するという.
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=33983
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20101204-OYT1T00970.htm